人気ブログランキング |

ブログトップ

白髪の旅ガラス

<   2011年 09月 ( 50 )   > この月の画像一覧

ドジョウのままで

 夕方になると風も止み雨も上がった。それを祝うかのように西日が差し込み、俄かに明るくなった東の空高く入道雲が現われる。

 その頂上の辺りは、太陽の光を受けて一段と明るい。それが更に上昇する様は、正しく昇り竜に見える。だが、下の方は灰色掛かった雲ばかりで、地味な生物が棲んで居そうだ。

 新しい首相は、自分のことをドジョウのようだと言う。この言葉は、元首相のアドバイスから生まれたようだが、仲間の議員の心ばかりか国民の心も掴んだようである。

 それは、新首相の支持率65%に現れた。もはや、地味なドジョウではなく派手に川を上る鯉と言えるだろう。

 入道雲に垣間見た昇り竜は瞬く間に消えてなくなった。灰色の雲に隠れて姿の見えないドジョウのままであれば、何処にでも住めて長生きしそうである。

 このところの首相は、短命過ぎて想い出すのも容易ではない。新首相には、暫くドジョウのままで居て欲しいものである。

鏡見て 己知る才 ガマに真似
d0052263_8491634.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-09-05 08:49 | 随筆 | Comments(0)

窓からの侵入者

 晴れたかと思えば、急に曇り突然の雨となった。普通の雨ならば慌てないが、横殴りの強風は窓から室内に雨を侵入させる。

 昔の家なら、そんな雨を想定して庇も長く張り出し、作業場を兼ねた縁側があり、雨が窓から室内へ直接侵入することなど考えられなかった。

 もっとも、嵐の際には雨戸を閉めて、風雨を防ぐ必要がある。今の家でも、その用意はあるが、晴れから雨に急変する天候には、庇と縁側がないから間に合わない。

 或る人の言葉を想い出した。
「子供部屋に入ったら、窓の下で雨に濡れたまま。死んだかと思い揺すり起こしましたよ」

 庇から壁まで、それに窓から寝床まで、余裕のある家の造りであれば、窓から雨が侵入することなどあるまい。

秋風に 窓を開ければ 呼ばぬ雨
d0052263_13483369.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-09-04 13:48 | 随筆 | Comments(0)

ヤモリの捕食を見た

 食欲の秋は、人だけではない。我が家のヤモリも、秋の夜長を捕食に賭けている。だが、その瞬間を見たことはなかった。

 これまで見て来たような発言があったなら、家人に聞いた話を見たように作った小説であるから容赦願いたい。

 今宵は胸を張って捕食の瞬間を見たと言える。ガラス窓の中央に陣を構えていたヤモリ、首を素早く後に反らして、格子に貼り付いた体長五分余りの蛾を口先に捕らえた。

「見たぞ」
 台所で日本酒を立ち飲みしながら、その瞬間を飽きずに見守っていた男は叫ぶ。
「何を見たの」
 二階で探し物をしていた女は、階下の叫び声に呆れて言う。

「蛾を捕まえたのさ」
 それと知って、安心した女が言った。
「凄いでしょう」

 男は、女のコメントには答えず、蛾の姿が完全に見えなくなり、腹に送り込まれる様子に目を凝らす。こうして、秋の夜長を楽しむ男、一人位居ても悪くはあるまい。

嵐去り 虫の音響く 枕元
d0052263_03357.jpgd0052263_041189.jpg
by tabigarasu-iso | 2011-09-04 00:05 | 随筆 | Comments(0)

不思議なアマリリス

「この花、どうした」
「アマリリスよ」
「はて」
「歌に出て来るでしょう」
「・・・♫しらべは♫アマリリス♫だったか」
「そう、その歌に出て来る花よ」
「それで」
「あなたに見せたくて」
「そうか・・・・・」

何よりも お喋り好きな アマリリス
d0052263_15571951.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-09-03 19:11 | 小説 | Comments(0)

風に吹かれて

 台風12号は、時速15キロメートルの速度で四国に上陸し北へ向かっている。その勢力は未だ衰えず、日本の半分を巻き込む範囲で、激しく雨を落とし強い風も吹き止まない。

 ピューピュー、ヒュルヒュル、グゥオングゥオンと音色を変え、一晩中吹き続ける風に邪魔され、眠ったようで眠れない夜を過ごし、幾らか静かになった隙にまどろんだ。

 この風で大きな風車を回せば、粉も挽くことが出来て、水も汲み上げられる。発電機を繋げば電気も起こせるが、自転車の速さで去って行くから当てにならない。

 一方、激しい雨は山を崩し河川を氾濫させるから、当てにしてはいけない相手であるが、恵みの雨にもなるから皆無では困る。

 当てにならない風と当てにしてはいけない豪雨、両者で成り立つ台風と旨く付き合う方法を思い付いた瞬間、残念ながら目が覚めた。

絶え間ない 風に吹かれて 蝉飛べず
d0052263_1534022.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-09-03 15:05 | 随筆 | Comments(0)

昨日より綺麗になった

 夜間、非常に激しい雨音で飛び起き、開けたままの窓を閉めた。強い風に流された雨、室内に幾らか入り掛けている。

 窓を閉め切った室内、次第に蒸し暑くなって行くが、眠気が上回り苦にならなくなった。何度か寝返りを打つ間、深い眠りに誘われ、夢を見る暇もない。

 太陽の昇る時刻、いつものように目を覚ました。いつもと違ったのは、そのまま起きて出掛ける身支度を始めたことである。

 朝一番の上り電車、予想通り車内は空いていたものの、既に席は満席であった。立ったままの姿勢ではパソコンも打てないから、たまには外の景色を眺めてみよう。

 後に切れ間なく走る街並みは大雨に洗われ、いつもとは違って見える。樹木は緑を鮮やかにし、瓦屋根は埃を落として元の色を取り戻す。何もかも、昨日より綺麗になった。

天気予報 非常猛烈 多くなり
d0052263_11264420.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-09-03 11:27 | 随筆 | Comments(0)

吹き荒れコンサル

 風雨の強烈な台風が接近する最中、大半の人が及び腰になり、遠出を控える中にあっても、コンサルは約束を守り客先に出向いた。

 交通手段の混乱を見越し、余裕を持って朝一番の電車で出掛けたが、台風の進む速度は遅く、報道されるような空模様ではない。

 いかにも到着が早過ぎ、新幹線の待合室で朝食のおむすびを喰えば、見慣れた客人が笑って見ている。
「お二人とも早いですね」
「そう言われるコンサルも早いですね」
「はい。約束に遅れる訳には行きませんから」

 コンサルの支援内容は内部監査準備の支援であり、焦点は前回の内部監査と審査への対応が有効であるか、確認して貰うことであった。

「前回の内部監査、不適合の案件が単なる注意になっています。これは、内部監査の不適合ですから、その後の対応状況を再度確認して下さい」
「コンサル、今日は一段と吹き荒れていますね」
「はい。台風時のコンサルですから」
「なるほど」

山猿は 荒れる浜辺で 腰を引き
d0052263_18492380.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-09-02 18:49 | コンサルサービス | Comments(0)

蒸し風呂の通り

 空調の効いた部屋から通り出た瞬間、ストーブの焚かれた部屋に入ったような。周囲を確かめれば、街路樹があるから通りに間違いない。

 しばらく歩くと、全身から汗が滲み出る。むかしむかし、サウナ風呂に一度だけ入ったが、その時の息苦しさを想い出していた。

 その時は、風邪を引き熱のある身体であったが、サウナに入れば治ると言われ、疑うことを知らない若者である。

 だが、喉は乾き体温は上がるばかり、風邪が治る前に命の危うさを感じた。何とかアパートに戻り一命は取り留めたが、それからサウナに行ったことはない。

 その当時と同じ状況が通りにはあった。ただ、開け放れたビルディングの出入り口から流れ出す冷気が、時折体温を下げてくれる。

 お陰で、蒸し風呂の通りを歩き切り、冷房の良く効いた電車に乗ることが出来た。これも、大型台風が熱と湿度を持ち込んだ結果だから、誰の所為でもない。

蒸し風呂に 入るカラスも 悪くない
d0052263_6383221.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-09-02 06:01 | 随筆 | Comments(0)

還暦審査員の予習

 平均年齢60歳以上の審査員でも、審査前の予習は欠かせません。審査先の資料に目を通すのは当り前のことで、それ以外に専門性を確保する予習が必須です。

 例えば、審査先がプラスチック加工業であれば、その全体像を把握して、どんな法規制が適用される可能性があるのか、どんな緊急事態が想定されるのか、審査に当たり注意する点は何か、予習しておかなければなりません。

 ある審査機関では、その内容をレポートにまとめ、専門性を持つ審査員に検証して貰います。内容が不充分の場合、何度でもレポートの再提出になりますから、充分な調査が欠かせません。少なくとも、一つのレポートに関し、調査期間はニ三日必要です。

 久し振りに審査を行う機会に恵まれ、さっそく届いたのが、そのレポートの要望です。それも二種類ですから、大変有り難く思わず溜息が出てしまいました。まさか、還暦を迎える歳になり、予習に悩まされるとは、正直なところ想定していないことです。

 とは言え、課題を持った生活は張りがあって良いもので。そこで、覚えの悪くなった頭をフル稼働させ、充分な予習で専門性を高めて審査に臨むことにしました。そんな翁を見掛けましたら、労いの拍手を忘れないようお願います。

蒸し風呂に 浸かったような 雨上がり
d0052263_18592777.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-09-01 18:50 | 随筆 | Comments(0)

話を中断させるコツ

 相手が手の空かない仕事の最中であろうがなかろうか、自分の言いたいことを一方的に長々と話して満足する人が居る。

 一生懸命な姿勢を認め、一時手を休めるとしても、何を言いたいのか目的のはっきりしない長い話には、最後まで付き合う訳には行かない。

 適当な所で、相手の話を中断させる必要がある。
「大変興味深い話ですが、この続きは後で伺います」

 かように相手を尊重しながら丁寧に断わり、中断した自分の仕事に戻るのが良い。さもなければ、意味不明な結論に導かれ、後日、無駄な対応に後悔することになるだろう。

ネクタイの 結び忘れる 日は近い
d0052263_914298.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-09-01 00:24 | 随筆 | Comments(0)