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白髪の旅ガラス

<   2011年 06月 ( 53 )   > この月の画像一覧

「お陰様で、審査を無事に終えることができました。質問がありましたら、伺います」
「何でも宜しいですか」
「勿論です」
「それでは、感じたところを申し上げれば、今回の審査、これまでの審査とは全く違いますね」
「・・・それは良い意味でしょうか。それとも・・・」
「勿論、良い意味です」
「安心しました。それでは、どんな点が違っていたのか、伺えますか」
「こちらの話を聞いてくれる点です」
「あれ、今までの審査員は話を聞いてくれなかったのでしょか」
「審査員の聞きたいことに終始していましたね」
「それは、お疲れ様でした」
「それに、言うことが良く判らない審査員が大半でしたね」
「日本語でしたか」
「ええ、日本語でしたが、こちらが判るようには話してくれません」
「判りませんと言えば宜しいのに」
「そう言えば、不適合と言われそうでしたから、判った振りして頷く」
「皆さんの悲痛な表情が読めない審査員のようでしたね」
「おっしゃる通りです」
「で、今回の審査では」
「あなたは、審査の新種ですね。こちらの話を聞いてくれ、説明も判り易い。まるで環境コンサルを受けているようでした」
「・・・」

誰の為 審査するのと 詰め寄って
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by tabigarasu-iso | 2011-06-19 09:47 | ISOマネジメント | Comments(0)

隠せない

 人の気持は、顔に現われ、言葉で判り、写真で見付け、文章から読み取れるものです。それを承知で、人前で表情を豊かに語り、気持を表す写真を遺し、意図的に文章化を試みるのが人でしょう。

 明るい花の写真を見せる時は、心の素直な状態か、その逆も場合もあります。何れか決めるのは、それを見た人の心の問題にも関係しますから、どんな評価が下されることでしょう。

 道端のアスファルトの隙間に可憐な花が咲いています。心無い人は、それを踏み付けるかも知れません。心細やかな人は、立ち止まって屈み込み、逞しく生きる姿を見詰めた後で写真に撮ることでしょう。

 その写真を送って貰った人は、写真の中に送った人の心を見付けます。豊かな土壌で何不自由なく育った花に比べ、厳しい環境で育った花は一段と美しい。その感動を自分だけに留めて置くことが出来ず、誰かに伝えたかったことでしょう。

岩砕く 松の根に似た 花見付け
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by tabigarasu-iso | 2011-06-18 15:53 | 随筆 | Comments(0)

京都の時代

 早朝、京都の地下鉄に乗った時のことです。空いた車内、目の前で新聞を大きく広げる若い女性がいました。珍しく思い横を見渡せば、他にも数人の女性が同じ様にしています。

 かような光景は、東京の地下鉄では見たことがありません。良く目にするのは、携帯を起用に操作するか、人目も憚らず化粧する女性の姿です。

 中には書物を読んでいる人もいますが、大きな新聞を広げるのは大半が男性で、若い女性がそうする光景は、東京で見たことがありません。

 新聞を広げる若い女性に新鮮な驚きを感じながら、再び京都の時代が来る、そんな思いを寄せる静かな地下鉄の車内でした。

紫陽花の 鮮やか色を 天にあげ
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by tabigarasu-iso | 2011-06-18 09:59 | ニュース | Comments(0)

寝覚の床

 中央西線の木曽福島駅の近く、木曽川の流れが花崗岩を削った見事な岩床があります。車内のアナウンスでは、有名な寝覚の床と言うことで、思わず立ち上がり見下ろしました。

 誰が寝ていた床か知りませんが、頂は平らで周囲は切り立っています。水流は、どのような技を使い削り上げたのか、不思議でなりません。

 ところで、この床は水力発電所が川の水を利用し始めて現われたそうですから、それまでは水流の中に大半が隠れていたようです。

 浦島太郎が龍宮城で貰った玉手箱を開け、夢から覚めた床が謂れのようですが、水力発電所が水を飲み干して、落ちたら危ない高い床になったこと、彼は知らないことでしょう。

木曽川を 上る翁の 白昼夢
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by tabigarasu-iso | 2011-06-17 01:12 | 随筆 | Comments(0)

 甲府駅よりタクシーで20分余り、静かな住宅街に審査先はありました。一年振りの審査になりますから、専門のコンサルでは厚顔な旅ガラスであっても、一期一会の審査では、流石に緊張感は隠せません。

 審査の冒頭、その心境を正直に伝えました。
「恥ずかしながら、この歳になりましても、緊張して居りますので、皆さんはリラックスして頂いて結構です。それに、皆さんは大勢ですから、一人のこちらは敵いません」

 緊張した面々の明るくなるのが判ります。相手の肩の力が抜けたところで、前回の審査で残した宿題について、確認を始めたところ。開け放った窓から、カッコウの鳴き声が飛び込んで来ました。

♪アッホウ♪アッホウ♪アッホウ♪
 何となく、審査内容を否定されているような気がして、声の方に顔を向けてみました。すると鳴き声が止み、質問を再開した途端に鳴き声も再開します。

 どうやら、意味のある質問に変えなさいとカッコウが暗示しているようですから、今回の審査で確認したい本題に移りました。すると、嘘のように鳴き声は止み、こちらの発言に聞き耳を立てているカッコウの姿が見えるようです。

 こうして、カッコウの立会いの下、耳の痛い質問を矢の如く飛ばし、今後の対応について大いに議論を交わす審査になりました。果たして、その成果は次の機会に確認できることでしょう。

カッコウに 審査立会い 頼む鳥
by tabigarasu-iso | 2011-06-16 12:18 | 小説 | Comments(0)

帰ってきたヤモリ

「最近見なくなったわね」
「もしかしたら、近くの猫が食べたのかしら」
「そう、絶対そうだわ」
 そんな会話があったのは、昨年の梅雨時のことです。

「やはり、今年は姿を見せないね」
「そう、少し淋しいわ」
 そんな会話があってから、幾日か経った頃、メールがありました。

『帰ってきたヤモリ』
 そのタイトルで、内容の全てが判ります。添付された写真を見れば、昨年より立派な体格のヤモリが窓ガラスに貼り付いていましたから、同じ固体が成長したに違いありません。

 その写真を本文とは関係の無い記事に載せてみましたが、殆どの人が判らないことでしょう。唯一人、写真を送ってくれた本人に判れば、それで良いのかも知れません。

生物の 多様性は ヤモリにも
by tabigarasu-iso | 2011-06-16 00:00 | 小説 | Comments(0)

イカ天の旅

 新幹線で米原から名古屋駅に着き、「特急しなの21号」の発車番線に移動した。発車まで四十分近く時間があるが、いつも慌しい乗り換えばかりだから、たまには駅で乗換えを待つのも良い。

 ならばホームできしめんと思い見渡せば、幟が笑い端の方で待っている。昼飯も麺類であったが構わず、イカ天きしめんを頼んだ。普通の店であれば、麺を湯で温め、汁をかけ、イカ天を載せて出来上がりだが、その店ではイカ天を油で揚げる。

 味はともかく、客の前で天ぷらを揚げる雰囲気が良い。気持良く胃袋に納めたところへ電車が入り、名古屋から塩尻までの初めての移動が始まる。走り始めて間もなく、車両の横揺れが気になりだした。それは、周囲が明るい所為か、夜間の塩尻から名古屋移動に比べて大きく感じる。

 そう思うと不思議なもので、先程のイカ天が胃袋の中で元気を取り戻す。まだまだ胃液に溶かされるのは早いよと、威張っているようである。それでは具合が悪いから、天然水を流し込んで熱を冷ますことにした。本来なら、その役割は麦酒だが、車中で宿題のある身では我慢するしかない。

 下ばかり向いているのも良くないと、顔を上げて車窓を眺めた。山の斜面にある棚田では、稲穂が気持良さそうに背を伸ばし、栗の花も妖しく咲いている。山並みに隠れる直前の西日が、緑一色の景色を暖色で照らしたところで、気付けば胃袋のイカ天は大人しくなっていた。

車窓には 緑の党が 天下取り
by tabigarasu-iso | 2011-06-15 18:12 | 随筆 | Comments(0)

流れ流れて

 流れ流れてコンサルの旅
 今日は江戸か明日は京都
 淀み空を恨むじゃないが
 せめて晴れ間で迎えてよ

 疲れ疲れて居眠りしては
 外の闇夜に彼女の笑顔を
 ふっと見付けて知らず涙
 せめて拗ねずに迎えてよ

 流れ流れてコンサル移動
 京都から甲府まで唯一人
 誰も居ないデッキに移り
 話す相手は夜空お前だけ

梅雨時は でんでん虫に なれば良い
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写真説明;左は2010年のヤモリ、右は2011年の成長したヤモリ、体長の違いが明らかです。
by tabigarasu-iso | 2011-06-15 07:08 | 小説 | Comments(0)

明るい審査

 審査は、明るくなければいけません。指摘するのは審査員で、それを是正するのは審査を受ける組織ですから、審査員は明るい審査が出来る筈です。

「皆さん、今日は」
 やけに明るい審査員が登場しました。暗い雰囲気に慣れた会場は、どう反応したら良いのか戸惑いを隠せません。

「私、審査員の明るい太郎と申します。今日一日、皆さんに協力頂き、皆さんにとって素敵な指摘を沢山遺して帰りたい・・・」
 そこで会場を見渡し、幾らか笑顔が見えたところで、審査員は明るい審査を説明しました。

「審査の基準は、世界標準と皆さんの決めたことですから、適合していれば合格、少し外れていれば補修、大きく外れていれば軌道修正。私は、現場と資料を拝見して、どれに該当するのか説明するだけですから、簡単なものです。これで、お飯が食えるのですから、楽しくて堪りません」

 そんな審査の説明に若い方が不満そうに。
「駄目出しだけでなく、どうしたら改善できるのか、教えて貰えないのでしょうか」
「はい。私は、皆さんの仕組みが改善できる指摘しかしません。何故指摘されたのか、良く考えて対応すれば、改善の策も自然に見えてくるでしょう。はい」

苦瓜の 蔓先留まる 先探し
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by tabigarasu-iso | 2011-06-14 06:45 | ISOマネジメント | Comments(0)

彦ニャンに聞こう

 こう毎日曇り空が続くと、何故か彦根が恋しくなる。彼の地は梅雨時に限らず、曇り空の頻度が高い地域だ。

 かつて、その訳を地元の人に聞いたことがある。
「琵琶湖の所為ですよ」
「・・・」
 琵琶湖の近くでは、雲が発生し易いものであろうか。

 その訳までは、聞く暇がなかった。暇に任せて想像してみれば、日本海や瀬戸内海から吹く風が琵琶湖上の水分を飲み込み、息吹山に沿って上昇する。すると次第に気温が下がり、風に含まれた水分が結露して行く。

 その風は一年を通して北と南から吹くから、彦根地域は一年中曇り空が多い。そうではなかろうか。その返事を聞く為、これから現地に向かう。
「彦ニャンに聞こう」

曇り空 その訳探しに 京へ行く
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by tabigarasu-iso | 2011-06-13 18:47 | 随筆 | Comments(0)