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白髪の旅ガラス

2014年 02月 01日 ( 1 )

不治の宣告

「あなたの耳は加齢ですから、今より良くはなりません」
「すると、聞こえ難いまま過ごすことになるのでしょうか」
「ええ、現状を受け入れてください」
「そうですか」

 治ると信じて通い続けた耳鼻咽喉科の医師は、治療を始めて一ヶ月が経った時点で、言葉巧みにそう言った。だが、治らないと言われた側は堪らない。何の治療も施されないまま、すっかり気を落として帰路に着く。

 それにしても、不治の宣告は可笑しい。水の底で音を聞くようになったものの、時々、元通りに聞こえる時もあるから、このまま聞こえ難いままで終わることはなかろう。そう思い直して、別の耳鼻咽喉科を受診することにした。

「どうしましたか」
「耳の聞こえ方悪くなりまして」
「何時からですか」
「二ヶ月前からです」
「どうして、これまで治療しなかったのですか」
「いいえ、昨日まで治療は受けていましたが、そこで治らないと宣告されましたので」
「いいえ、治ります。原因は中耳炎で、鼓膜が内側に押されていますから、炎症を治し、鼓膜を元の位置に戻しましょう」
「そうでしたか」

 当然のことながら、医者にも色々ある。話は旨いが診立ての悪い医者に遭遇すれば、言葉に騙され病気は良くはならない。医者は、噺家ではないから話が下手でも診立ての良い人を探し当てるまで、決して諦めないことだと教えられたようである。

 薮医者に 別れを告げる 患者あり
by tabigarasu-iso | 2014-02-01 00:00 | 随筆 | Comments(0)