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白髪の旅ガラス

2013年 03月 09日 ( 1 )

野良猫の虎之助

 濡れ縁に大きな雀の陶器を置いて暫らく経つ。風雨に曝し続けた所為か羽毛の色が薄れたような気がする。幾ら待っても来ない仲間に疲れてしまったのか。

 その雀に数日前から仲間が現れた。雀の横を縄張りに決めた野良猫である。門扉を開けると二匹が仲良く並んで座り不思議な世界に入り込んだようだ。

「こんばんは」
 声を掛けると野良猫は逃げようと身構える。漸く確保した席であろうからそのままにして置こう。それ以上は声を掛けず静かにドアを開け後ろ手で静かに閉めた。

 玄関の隅に見慣れないものがあった。段ボールの蓋を開けて中にタオルが敷いてある。
『野良猫さん用だな』
 生憎、野良猫さんは誘いには乗ってくれなかったようだ。

 そうと推測しながら言ってみる。
「あの箱はどうした」
「虎之助、入ってくれないの」
 既に名前まで決めている。

 どうやら我家に新しい仲間が増えそうだ。それも家の外で雀の横が定席になる。虎之助と名付けても呼んだら逃げる野良猫は、御飯の礼であろうか今宵も雀の横で不審者を見張って微動もしない。

 夜の番 野良猫あてる 気楽もの
by tabigarasu-iso | 2013-03-09 10:00 | 小説 | Comments(0)