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白髪の旅ガラス

2012年 06月 02日 ( 1 )

巨人ではなかった

 その日は、雷を伴う夕立の所為で蒸し暑くなりました。始発駅の特急を待つホームに立ち止まり、冷えた麦酒を今買って電車の中で飲むか、それを我慢して家に帰で飲むか、真剣に悩んだものです。

 それと言うのも、翌日の為にパソコンと睨めっこをしなければいけません。麦酒を飲みながら出来ないことではありませんが、それではパソコンと麦酒の両方に失礼となります。

 脳味噌を使って文字を何度も並べ替えなければ、魂の入った文章とはなりません。それには、厳かな姿勢でパソコンに臨む必要がありますから、アルコールは控えることにします。

 麦酒は、真剣に飲んで楽しまなければ、原料を作った農家の方や麦酒を製造したメーカーの方に申し訳ありません。まして、パソコンを叩きながらでは、余りにも麦酒に対して失礼です。

 そんな検討を終えて電車に乗り込み、席に座ってパソコンを開いた時のことでした。停車している大きな車両が上下に揺れ始めましたから、とんでもない巨人が乗り込んだ衝撃かと思ったのです。

 それにしても、揺れが長過ぎましたから、念の為に向かいのホームを確かめて見ました。すると、ワイヤーに吊った電車の行先を示す表示板が上下にユラリユラリと揺れています。

 それにまた、いつもなら座席を確保できる満足感で最前列に落ち着いて並んで待つ人が、揃って不安げに顔を動かしていますから、これは巨人ではなく地震だと。こんな呑気も、仕事を終えた週末の帰路であったからでしょう。

 飛び出した 本を押し込む 何度目か
by tabigarasu-iso | 2012-06-02 10:00 | 随筆 | Comments(0)