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白髪の旅ガラス

2011年 06月 09日 ( 3 )

だましあい

 暑い昼、いつもとは異なる店に入り、冷やしきつねそばを頼んだ。
「あれ、油揚げに揚げカスが」
「どうされましたか」
「きつねを頼んだのに、たぬきも入って、二匹が騙し合い」
「どれ、見せてくださいな」

 見たところ、両者の間にダイコンおろしが入り、その上にワサビが色を添える。
「大丈夫ですよ。行司役が素晴らしいではありませんか」
「そう言われてみれば、刻み海苔も間にあるから、繋ぎで仲良くなるか」
「その通りです」

 気持ちを静め、冷えた汁を両者に掛けた。それが浸透する前に箸で摘み、思い切り音を立てて吸い込む。
「これは旨い」
「そうでしょ」
「きつねとたぬきが、食道へ落ちて行く」
「得をしましたね」

 黙って頷き、最後の汁まで飲み干してから。
「胃の中で、どちらが旨いか心配している」
「答えてあげたらどうですか」
「そうだな。で、何と」
「きつねとたぬき、騙し合って味も良しとでも」
「なかなか世辞が上手だね」
「ええ、誉めるのが商売のコンサル(狐と猿)ですから」

空き腹に きつねとたぬき 入り込み
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by tabigarasu-iso | 2011-06-09 21:04 | 小説 | Comments(0)

車が消えた

 突然の電話に開いた口が塞がらない。
「車が消えた」
「何処へ」
「・・・兎に角、無い」

 昨日まで駐車場に停めて置いた車が何処かに消えたようである。長年使い込んでいる車だから、半ば諦めながら言った。
「警察に届け出た方が良さそうだ」
「何故」
「訳は後で」

 それから数秒後に携帯電話が鳴って。
「想い出した」
「・・・」
「昨日、デパートの駐車場に車を置いて出掛け、帰りにバスで帰った」
「そうか、良かった」

 良かったのは、車が見付かったことは勿論だが、それよりも慌てた本人が車の所在を直ぐに想い出してくれたことの方である。

頭うえ 置いた眼鏡を 探す人
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by tabigarasu-iso | 2011-06-09 18:12 | 小説 | Comments(0)

駅中レストラン

 複数の路線が交わる駅の大きな通路や広場を利用した、駅構内の店が繁盛している。ハイカラになった所為もあるが、顧客向けサービスを前面に押し出した販売戦略の成果であろう。

 かつて駅の構内には、キオスクか立ち喰いそばくらいしかなかった。必ずしも商売熱心とは言えず、JR関係者の就職先としか思ったことがない。

 今では、デパートの地下と見間違う程の賑わいである。少しばかりの休憩を兼ねて、順番を待たずに済む、やや高い値のレストランに寄ってみた。

 予想通り、直ぐに席へ案内され、室内を見渡せば満席である。タイミングが良かったようで、気持ちを良くして麦酒に大きなエビフライとカレーライスを頼んだ。

 冷凍物を解凍するのとは違い、コックが料理する本格的な店である。暫く待たされて疲れた取れた頃、見た目も綺麗な料理が運ばれて、大きなエビフライの味を確かめた。

「また来ようか」
 こうして、二人の評価は一致する。これほど便利で旨ければ、駅の外のレストランは競争にならない。

駅中の 店が栄えて 降者減り
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by tabigarasu-iso | 2011-06-09 12:03 | 随筆 | Comments(0)