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白髪の旅ガラス

2010年 06月 29日 ( 1 )

疲れた子供

 秋葉原駅の地下深くに潜り、つくばエクスプレスに乗車した時のことです。折り返し始発電車の車内に入り、足を前に伸ばせる席を探して座ったところ、前席には首に携帯電話、小袋、バックを掛けた小学一年生くらいの子供が眠って居りました。

 その子供は、出発の時間が迫っても起きる気配はありません。終点に到着したのが判らないのでは可愛そうに思い、傍に寄り軽く揺すりましたが、何の反応もありませんから、様子を見守ることにしました。

 途中で眼が覚めれば、降車駅に戻る智恵はあるだろう。そう思いながらも、顔を良く見ますと、額と頬に出来たばかりの擦り傷があり、手の甲にも傷跡が認められます。もしかしたら、家庭か学校で苛めに合っている子供ではないでしょうか。

 車内だけが安眠できる場所だとすれば、そっと寝かして置いてやるのも良いでしょう。かように想像を膨らませ、腕時計を確かめると発車してから二十数分が経ち、南流出と言う駅に電車は停車しました。

 すると、その子供はどうでしょう。徐に目を覚まし、立ち上がると荷物をあらため、落とした菓子の破片まで拾い上げ、悠然と降りて行きました。どうやら、予定の乗り越しであったようです。

 それは良いとし、顔の傷が苛めでないことを祈りながら、疲れた子供の後姿を見送りました。

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つくば駅 ガマの鳴く声 ほど遠く
by tabigarasu-iso | 2010-06-29 01:35 | 小説 | Comments(0)