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白髪の旅ガラス

2010年 05月 03日 ( 1 )

遅い春

 季節外れの大雪の所為か、いつもならは散り始めている桜も満開であった。海抜八百メートルの高原では、梅、桃、桜が揃って花を咲かせる。それは見事なものだが、これまで五月の連休では、その面影しか残っていなかった。だが、今回は遅い春のお陰で見所に間に合う。

 その一方、木の芽は蕾から出たばかりで、木肌を覆うまで葉が成長していない。いつもなら、好物のタラの芽も食べ頃になっている時期だが、枝先に出たばかりで指先で掴む余地もないから、その後の成長を想像するだけで満足するしかなかった。

 春の食卓には欠かせないセリの生長も遅く、腰が痛むのを我慢しながら摘み取っても、丈が短いからなかなか量が増えない。それでも、冬を越した逞しい野草だから、軽く湯に通してから刻み、醤油を掛けて食べれば、独特の苦味と香が口中に広がる。

 そればかり狙って箸を付け、充分過ぎるほど飲んだ翌日のこと、川のせせらぎに起されて目覚めれば、何処かで鶯が鳴く。外に出て梢を捜すが、声ばかりで姿は見えない。諦めて引き返そうとした時、こちらですよと又鳴いた。

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山肌に 一人化粧の 山桜
by tabigarasu-iso | 2010-05-03 19:50 | 随筆 | Comments(0)