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白髪の旅ガラス

2008年 12月 31日 ( 1 )

鼠の想い出

 丑年に変わる前に、一年の働きを労い、鼠に関わるエピソードを語ります。むかし、むかし、その人が洟垂れ小僧の時でした。稲を玄米や白米に、それに小麦を粉に替える精米所を、小僧の母親が運営していた頃のことです。

動力を水車から電動モートルに替えた小屋で、白い粉で全身に化粧した母親は、小柄ながら俊敏な息子を呼んで、その径は二尺余り、高さが六尺もある、底が漏斗になった金属容器に落ちた錘を取るように、息子の細い腰に帯を結び、頭を下に吊るし降ろして行きました。

 逆さまの息子は、そのまま転落したら誰が引き上げてくれるのか、そんな心配もしないで、容器の下を塞ぐ大きな錘を手にすると、その先で籾の行く手を遮る黒い塊に気付き、母親に懐中電灯で照らして貰いながら。
「おっかあ!でけぇ鼠もいたぞ」

錘と鼠を手にして離さない息子は、母親の太い腕に引き上げられ、子供ながら大人に負けない仕事を済ませ、何とも言えない満足感を味わったことでした。もしも帯が切れたら、深い容器の底まで、息子を引き上げに行ったのは誰か。きっと母親は、小僧の兄を呼び、その腰に帯を結んだことでしょう。

振り返り 想い出すのも 年の所為
by tabigarasu-iso | 2008-12-31 01:30 | 随筆 | Comments(0)