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白髪の旅ガラス

2008年 10月 19日 ( 1 )

白い菊

 一輪の白い菊の花を手にして、案内される方向に黙って進めば、数ヶ月前に挨拶を交わした方の写真が、微笑を浮かべておりました。左手の奥で立ったまま迎える遺族の方に黙礼し、積み上げられた菊の花の壇上に、それを静かに重ね上げてから、何も問わずに合掌します。

 同世代の方で突然の他界でしたから、目の前の位牌が他人事とは思えず、つい目頭が熱くなり、暫く合掌したままでした。合わせた手を下ろして遺族の近くに進み、聞こえぬ声でお悔やみを申し上げれば、憔悴し切った顔で挨拶頂く。

 こうした遣り取り、何とも残酷な場面に思えてなりません。他界された方に献花するのが目的の送る会であり、商売関係の人ばかりで、遺族の方には見ず知らずの人の群れです。頭を下がられても機械的に返すしかなく、これは大変気を遣う役ですから、会社の人だけで対応されるのが適切でありましょう。

 そこから先は、清めの席が用意され、既に献花を済ませた方々が、盛んに飲み食いされている。それは作法で結構ですが、五十半ばで人生の幕を閉じた故人を偲べば、とても仲間入りすることなど出来ません。勧められて断るのも悪く、冷えたウーロン茶を頂き、無性に渇く喉を潤すだけでした。

                秋雨に 背中打たせる 白い菊
by tabigarasu-iso | 2008-10-19 12:26 | 随筆 | Comments(0)