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白髪の旅ガラス

2008年 05月 17日 ( 1 )

人情

 上野発の高崎線と常磐線の特急列車には、同じホームの隣り合わせの番線で、同時刻に出発するものがあります。高崎線の特急は自由席が大半であり、常磐線の特急は指定席が大半ですから、間違って高崎線に乗り込んだ人は、指定席の番号を探す人で直ぐに判る。

 そうとは知らないで座席に座れば、途中で上野まで引き返さなければなりません。それでは気の毒ですから、車掌でなくても声を掛けるのが人情というもの。
「どちらまで?」
 土産を抱えたおじさんの手にした乗車券を見せて貰えば、上野から土浦とあります。
「これは隣の列車ですよ!」
 大きな声で教えてあげる。

 高崎線の列車を降りてホームを走り、閉まり始めた常磐線の列車のドアに向かい、おじさんが叫ぶ。
「待ってくれぇ!」
 どこか覚えのある光景です。どうにか間に合ってくれるよう祈っていれば、そんな人が多いのでしょうか、車掌さんは慌てないでと声を掛け、おじさんの乗車を待って、扉をゆっくり閉めました。

 同時に動き始めた車内から、指定席に座るおじさんの姿を見届けて、何故か一安心。もしも声を掛けていなければ、走り始めた列車の中で、行き先が違うことに気付いたおじさん、どんなに慌てたことでしょう。それにしても、同じホームの左右の番線で、わざわざ同時に出発する、何とも人騒がせな時刻設定ですね。
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大鯰 一揺れにして 五万飲む
by tabigarasu-iso | 2008-05-17 21:47 | 随筆 | Comments(0)