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白髪の旅ガラス

2006年 02月 26日 ( 1 )

からし菜

 春の陽を背に浴び、空き地の枯れ草を彩る、色鮮やかな青菜を摘み取る老夫婦に、犬の散歩に飽きて声を掛けた。
「今日は。それを、どうされるのですか」
 人に見られ、バツが悪いのか、一人がその場を立ち去ろうとする。
「どうぞ、邪魔はしませんから、続けてください」
 人相は悪くないほうだが、髭も剃らず、髪も梳かさない、安物のジャンパーに古びたジーパン姿の見知らぬ男に、警戒心を持つのは当然であろう。
「何と言うものです」
 男性の方は、黙って青菜を刈り取る作業を続ける。
「からし菜です」
 警戒心を解いた女性が応えた。犬を後ろに回し、数歩近づく。
「食べられそうですね」
「そうですよ。お湯にからし菜をさっと通してから、塩を軽く振って漬物にすると、少し辛くて美味しいの」
「そうですか、知りませんでした。どことなく食べられそうな代物だとは思っていましたが」
「少しお分けしましょうか」
「いえ、散歩の途中ですから、結構です」
 好意は有り難かったが、物言わぬ散歩の友の通り道にあり、その上に片足を上げる姿を何度となく見守っているだけに、遠慮するしかなかった。

庭先に 椎茸少し 出ましたよ 
by tabigarasu-iso | 2006-02-26 14:05 | 随筆 | Comments(0)