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白髪の旅ガラス

2006年 01月 29日 ( 1 )

夜景

 はるか上空より見下ろす街の灯り、沢山の蛍が群がるように見える。まもなく着陸する安心感は、高度を急激に下げる不安と鼓膜が圧迫される痛みに挟まれ、打ち消されてしまった。強風のため、機体が揺れるアナウンスが機長からあった直後だから、尚更のことである。
 
 前方の大型スクリーンに映し出された誘導灯が次第に大きくなるにつれ、操縦席のパイロットの気分になった。その所為ではなかろうが、慌てて着地するタイヤが軋み音を立て、軽く機体がバウンドしたから平静でいられない。その直後、勢いを止めるエンジンの逆噴射が、ゴウと大きな音を機内に響かせる。

 間も無く、これまでに無い臭いが機内を漂い始めた。非常口座席に座った者の役目が書かれたオレンジのカードを内ポケットから取り出し、慌てて読む始末。このカード、チェックインを済ませたつもりで搭乗口に並んだところ、未だ済んでいないことに気付き、慌てて登録した際に渡された代物。早合点して注意勧告のカードかと思ったが、非常口に接している座席に座る者には、誰にも出されるカードであった。

 鳥は、猛スピードで突進し枝にとまるが、羽根を上下に動かし勢いを押さえ、バウンドすることもなく、枝へ静かに止まる。それに比べ、羽根の固定した飛行機は、充分な長さの滑走路であれば、静かに着地することも可能であろうが、そんな余裕のある飛行場はないから、多少のバウンドは仕方ないけれど、美しい夜景に見惚れた気分を、どこかへバウンドさせてしまった。

庭先の 木の芽膨らむ 知らぬ人
by tabigarasu-iso | 2006-01-29 14:47 | 小説 | Comments(0)