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白髪の旅ガラス

一升

 窓から満開の桜が見える。軽く一杯のつもりで立ち寄った居酒屋であったが、少しばかりの勘違いで、花見の宴会になった。まずは乾いた喉を麦酒で潤し、値段の手頃な焼酎を瓶で注文する。

 ところが、登場したのは一升瓶であった。三人で軽く飲むには多過ぎる。
「大丈夫、ボトルキープできますから」
 覚えたばかりの日本語に説得されて、それならと覚悟を決めた。

 同じ一升瓶でも、日本酒ならアルコール度も軽く、互いに三度もお替りすれば空になる。だが、焼酎を湯で割る二人とオンザロックを楽しむ一人では、なかなか埒が明かない。ただ、飲み物の切れる心配をすることもなく、宴会は続く。

 やがて、終電が迫る時間になる。いつしか、一升瓶には一合位の焼酎を残すばかりになっていた。良く飲んだものだと、他人事のように呆れ、急いで店を出れば、もたつく足取りに、飲み過ぎを知る。
一升_d0052263_2354636.jpg
          珍しい 一升瓶を 傾けて
by tabigarasu-iso | 2009-04-05 23:06 | 随筆 | Comments(0)