2008年 12月 18日
霜降り
無理やり削ぎ落とす手もあるが、ガラスの表面を傷めるから止めにして、家から持ち出したポットの湯を、少しずつ掛ければ、見る間に霜が溶けて視界を確保できる。この手間を考慮し、自動車通勤の方は、幾らか早めに起きなくてはならない。
ところで、霜が溶け易い場所とそうでない所がある。朝日の当らない駐車場では、いつまでも厚い霜が居座り続け、冷え切ったエンジンを動かしても暖房にはならない様子で、腕時計を見ながら忙しく煙草を吹かすドライバーを、バス停に並ぶ大勢の乗客が見守った。
霜降り、肉の世界では有り難い代物で、滅多に味わう機会もないが、霜が降りたフロントガラスは、同じ霜でも有難くない。そんな愚にも付かない想像をしている間に、定刻を大幅に遅れた市内循環バスは、扉を開けた瞬間、人息で濁った空気を顔面に吹き掛けた。
霜と露 同じ仲間と 溶けて知り