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白髪の旅ガラス

安眠の鼾

 枕が変わって眠れないのは、過去の話になりました。疲れが溜まれば、否応無しに眠れ、気が利くホテルに泊まれば、軟らかいものから堅いものまで、数えてみれば四個の枕がベッドの上に並んでいます。それを幾つか組み合わせ、好みの傾斜を作れば、空調音の無い室内は、いつもの古巣で眠るのと変わりません。

 唯一つ違うのは、老犬が主人と同じタイミングで繰り出す、呆れた鼾が聞こえないことでしょう。番犬であったことを忘れて久しい仲間は、専用の枕に頭を乗せ、主人の顔を眺めながら、安堵の溜息を漏らします。それが催眠剤になっていた所為でしょうか、枕の具居は良いものの、鼾の聞こえない部屋では、一向に眠れそうもありません。

 当ても無くテレビを点けて、ぼんやり動く映像を見ていれば、いつしか眼が疲れ眠れることを期待しました。けれど、余りにも馬鹿馬鹿しい会話の所為で、このところ忘れていた笑いが、眼を覚ましたようです。それにしても、演じるのでもなく、そのまま無知を曝け出す、芸人とも言えない芸人の多くなったこと。

 ならば、チャンネルを変えれば宜しい。静かな川のほとり、老いてなお剣豪の父を待つ、若い剣士の悩む姿が清々しく映ります。言葉を徒に使わず、心情をわずかな眼の動きで表す、濃縮したボディランゲージの極みに対し、言葉を多く発するコンサル稼業の学ぶ点があり、すっかり眠気は飛んで行きました。それでも、そろそろ身体を休めなくてはいけない時間帯ですから、どこからか仲間の鼾が聞こえてこないものでしょうか。
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空調の 音に負けない 声を張り
by tabigarasu-iso | 2008-06-21 21:05 | 随筆 | Comments(0)