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白髪の旅ガラス

急がば回れ

 近鉄線の五十鈴川駅を特急列車で出発したのは十七時半、そのまま名古屋駅に向かい新幹線に乗り換え岡山駅へ向かえば、二十一時には到着の予定であった。だが、駅に待ち合わせた仲間にその話をしたところ、名古屋駅に行くのは遠回り、大阪行きに乗ったら良いとのことである。

「さやけど、乗換えがやや複雑になりますねん」
 そう言われ、大和矢木駅で乗り換えて京都に行くことにした。地元の人は良いことを教えてくれる。感謝しながら、名古屋行には乗らずに難波行の特急に乗り、車掌に行先変更をお願いしたところ、指定席は取れないから空いた席に座り、予約者が現れたところで席を移動してくれとのこと。嫌な雲行きになったものだが、列車は名古屋と大阪の乗り換えとなる中川駅を過ぎて、もはや従うしかなかった。

 けれども、列車が駅に停車するたび移動の態勢に入るものだから、どうにも落ち着かない。パソコンを開いて仕事に集中することもできず、さりとて窓の向こうは夕闇で風景を楽しむこともできず、いつ閉じても良い雑誌を徒に眺める。こうして、殆ど乗客の居ない車内で、誰か来るのを心配しながら、それでも早道だからと自分に言い聞かせるしかなかった。

 大和矢木駅に降り立ち、京都行の特急をホームで待つこと三十分余り。乗れば間も無く京都駅、仕舞い掛けた店で残り物の駅弁を買い、やれやれと乗り込んだ新幹線は大阪停まりで買った弁当を食う間も無く、到着した大阪駅では発車間際のレールスターが待つ隣のホームまで走り、弁当を腹に納め瞼が重くなり始めた頃に岡山駅に到着した。既に二十二時は過ぎていたから、急がば回れとはこのことか。
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咲き誇る 花をいじめて 菜種梅雨
by tabigarasu-iso | 2008-04-26 18:31 | 随筆 | Comments(0)