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白髪の旅ガラス

 小さな柿木の細枝には、どの枝にも雀が鈴なりになっています。穏やかな冬の日差しを浴びて、雀の学校が開かれているのでしょう。皆が一度に好き勝手な話をするものですから、その喧しいことといったらありません。

 それが一瞬にして静かになり、枝から舞い立つ時の風を切る音が「ブルッ」と聞こえます。暇を持て余した猫が、遊び半分で近づいたのでしょう。危害を加えられる恐れが無いと知り、間も無く雀の集団は元の枝に舞い降り、先にも増してお喋り教室が再開します。

 相手にされなかった猫は、誰も責める者は居ないのに、獲物を取り逃がした責任を負って、申し訳無さそうに頭を下げて家の中に戻り、キャッツフードの入った容器に首を入れ、パリパリ音を立てました。

 枝先に残った柿の実を啄ばむ雀の姿を、飽きずに見守る暇人の一人が、ポツリと口に。
「数日前の事、似た様な場面で、どこからか隼が急に舞い降り、舞い上がった時には、雀をくわえていた」

 話の途中、再び雀の群れが枝先から消えました。舞い降りた物は無く、猫も食事中ですから、何に怯えたことでしょう。もしかしたら、仲間が隼に襲われた話が聞こえていたのかも知れません。
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               陽だまりに 一輪の花 早つけて
by tabigarasu-iso | 2008-01-04 01:01 | 小説 | Comments(0)