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白髪の旅ガラス

フリーパス

 上野駅の自動改札には、駅員が隙間無く並び、ゲートは開いたまま、貼り付けられた案内には、そのまま通過してくださいとある。何も知らない乗降客は、流れを止めないように、スイカを改札上に置くこともなく、素通りするしかなかった。

 けれど、地下鉄に乗り換えるには、改札を出た記録が必要である。大丈夫な訳がないであろうと思いつつ、日比谷線の改札にスイカを置けば、改札を出た記録が無いから、駅員の居る改札に回れと機械に指示された。

 怒る気力も失せて、指示された改札に迂回すれば、やや疲れ気味の駅員が、何も聞かずにスイカを手に取り、出札記録を入れてくれる。きっと、後から来る乗客も、同じ手続きになるであろうと、立ち止って様子を見れば、次から次へと自分と同じパターンが繰り返された。

 その都度、どんな表情で駅員に向かうか窺えば、誰一人怒ることもなく、それがいつもの手続きであるかのように、平然としているから面白い。日頃、自動改札に触れることも無く、機械的に通過することに慣れた感情の喪失であろうか。思えば、ベテランの駅員が打ち鳴らし続けていた、切符に鋏を入れる軽快な音が懐かしい。
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            機械慣れ 怒る気持ちも 機会待ち
by tabigarasu-iso | 2007-10-18 08:34 | 随筆 | Comments(0)