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白髪の旅ガラス

早生柿

 旬より早めの新米を頂いた数日後のこと、晩秋に柿を分けて貰う農家から、早生柿が獲れたからどうかとの連絡が入り、それが大好物の相方は、迷うことなく誘いに応じたのだが、断面にゴマが沢山ある割に、少しも甘さはなかった。

 一つ二つなら良いけれど、それが段ボール一箱だから、どうしたものか。しぶしぶ皮を剥きながら、口に運んで更に知る。
「甘くないし、水分も足りない。貰いものなら我慢もするが、購入したものだから、返そうか?」
「試食はしなかったけれど、ゴマの沢山あるところは見せて貰ったから、今更返せないわ」

 それにしても、どうしたことであろうか。このところ、太陽は激しく照り付け、雨も適度に降った。表面の艶も良く、その色合いも悪くない。甘くない理由が、見つからないのである。ひょっとしたら、別なものは甘くはないかと齧ってみたが、最初のものと同じ程度の甘さしかない。

 首を捻る男に、相方が手を叩いた。
「皮を剥いて、干し柿にしたらどうかしら」
 何とかしたい相方は、無理を承知で打開策を考えながら、今度は同じ農家で手に入れた栗を茹で上げる。けれど、それも甘さが足りない。
「糸で輪にして窓に吊るし、干し栗にでもしようか」
 男は、そう慰めるしかなかった。


             蚊が鳴けば 言いたいことを 文にして
by tabigarasu-iso | 2007-09-18 22:21 | 随筆 | Comments(0)