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白髪の旅ガラス

組織力

 誰でも、一人で出来る仕事に限界があることは、承知しているものです。けれど、自分以外の人と仕事をしていますと、自分の考えを抑えることが多くなるのも事実ですから、組織の中で仕事の出来る人ほど、独立志向が強くなるのは、当然のことと言えましょう。

 個人で出来る仕事であれば、直に独立し自由に活躍されるのが幸せです。けれど、個人で出来ると思っている仕事が、組織に所属していたから可能であった場合、独立した当初は順調であっても、次の仕事には恵まれない事態になります。

 組織と個人の何れに見合う仕事なのか、そのニーズの見極めは、仕事の種類により異なることになるでしょう。天気予報のようで恐縮ですが、個人で出来る仕事は、非常に稀なものです。その例を紹介したくても、やはり、他の力を借りずに出来る仕事は容易に思い付きません。

 著名な小説家とて、販売力の優秀な編集者に力を借りなくては、一冊の書籍とて売れないでしょう。頑固な大工とて、大黒柱を一人で支えることは叶わず、建て前には多くの人の力を借ります。優秀な医者とて、実務に長けた看護士が居なければ、一人の患者すら治療することも容易でありません。

 なのに、一人で仕事が出来ると勘違いをして、組織を離れる人の何と多いことでしょうか。そもそも、己の存在自体が、男と女の協同作業である原点を忘れた当人は、家庭と言う組織の中で生かされている事実を自覚することから、己の所属する組織の未来を悩む必要がある筈です。


               個を捨てて 群れで補う 渡り鳥
by tabigarasu-iso | 2007-09-02 17:52 | 随筆 | Comments(0)