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白髪の旅ガラス

二人連れ

 見るからに人生経験の豊富な二人連れが二組、同じ車輌に乗り合わせて居た時の事です。ビールを片手に辺り構わず大声で話す中年の女連れの横で、その騒音も耳に入らぬかのように揃って眠りに入った老夫婦、それをじっと飽きずに観察する暇を持て余した自分が居りました。

 女連れの後部座席に居た男は、二人が着席した途端に席を立ち、二人から遠く離れた席に移り替えましたから、未来が見える人でしょう。それに比べ、幾ら避けても思い通りにならないことの多さに呆れ、それなら避けずに、その場を楽しむことにした自分は、二組の違いを観察することにしたのです。

 その差は瞬時に判りましたが、どちらも見飽きた場面で、観察する立場としては、いささか面白くありません。いっそのこと、眠って居た夫婦が目を開けて、喧しい女連れの話題に口を挟むとか、マナーの大切さを諭すとか期待して居りましたが、いつまで経ってもシナリオ通りには展開しないようです。

 やがて老夫婦が降り、女連れの一人も降りて、車内は静寂を取り戻しました。お陰で、ネタを失うことになった自分は、ノートを閉じるしかありません。けれど、話の落ちをまとめずにペンを置くこともできず、一人残った女に先の勢いを取り戻し、「あたいの話を聞きな!」と、大声で叫んでくれることを願ったものです。
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            カタツムリ 出るに出られず 葉の裏に
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by tabigarasu-iso | 2007-06-09 16:33 | 随筆 | Comments(0)