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白髪の旅ガラス

飛行船

 日の暮れた西の空に、鯨に似た大きな飛行船が浮かんでいます。慌てず、ゆっくり旋回しながら、おもむろに帰り道を探しているようですが、胸の辺りに貼り付いた小判鮫のような操縦室は、おそらく盗賊の一味で満たされていることでありましょう。

揃って髭面の大男が肉の塊を食い千切り、今日の成果を酒の肴に加えて宴会を始めたようです。中には陽気に踊り出す者も現れたのでしょう、左右に飛行船が揺らぎ始めたから、それに違いありません。あちら側に成果があったということは、こちら側に被害が出たことになり、操縦室で交わされる話の内容が気になります。

「未払いの年金、たんまり頂戴したけれど、誰も追ってこんな。こんな美味しい仕事、他にゃありゃせん。年金の受給資格者から、未払いの請求もないようじゃけん、被害届けも出んじゃろう。未払い年金を失敬する今回の大仕事、犯罪にはならないから、大手を振って世間を歩けるのう」

 誰がどの位納めたか不明な件数が数多の年金、それを誰が横取りしようが判らないことを利用して、空の賊が犯行に及んでも仕方ない。そんな空想を抱かせる、お粗末な年金の管理に、これまで真面目に年金を納め続けてきた男は、飛行船を見上げながら、一人芝居を演じたのでありました。


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by tabigarasu-iso | 2007-05-30 00:19 | 随筆 | Comments(0)