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白髪の旅ガラス

腰痛

 特に無理した覚えはないのに、男は左腰に鈍い痛みを覚えた。右肩に重い鞄を掛ける所為であろうか。それとも、新幹線の座席で三時間半余り、同じ姿勢で眠っていた所為か判らないけれど、このまま放置しては良くないことだけは判った。

 ホテルに入り一風呂浴びた後で、男はベッドに横たわり腰の筋肉をゆっくり揉んでから、弛んだ腹を引き締めようとして、軽く腹筋運動を試みる。かつては百回も苦にならなかったが、三回も屈伸しない間に腹の筋肉が笑い始めた。

 無理は良くないから、枕に頭を載せたまま、テレビを点ける。そこに現れた青年は、男が以前に会った人に似ていた。大きな赤字から脱却したタクシー会社のプリンス、それが青年の紹介である。もう一度良く確かめてみれば、確かに男がコンサル先の若社長の友人として紹介された、その人に違いなかった。

 話を聞けば、当時のプリンスは赤字の処理に追われていたようである。けれども、そんな重い雰囲気は感じさせない、テレビと同じ明るい表情であった。いつの日か、コンサルの機会があればと密かに願っていた相手だけに、その成功話には首を起こしたまま、夢中に聞き入る。その所為であろうか、腹や腰の筋力も強化されたようで、男の腰痛は翌朝になると消えていた。


その時の やるべきことを やるが良い
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by tabigarasu-iso | 2007-05-18 00:13 | 随筆 | Comments(0)