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白髪の旅ガラス

さあいこうか

 秋雨の降る中、一羽のカラスが、電柱のてっぺんに陣取り、何やら呟いております。
『大樹の枝に羽を休めている諸君、いつまでそうしている。一向に雨は止みそうにない。巣で待つ子供達の為にも、暗くなる前に餌を探しに行こうではないか』

 近くの大きなけやきの枝で、雨を避ける仲間の一羽が、何やら返しました。
『もう少し待てば雨も止むから、そう慌てない方が良いですよ。風邪でも引いたら大変です。これまでも、雨が止んだ後で、何とか餌が探せたじゃありませんか』

 その横で羽を繕っていた一羽が、異を唱えます。
『そうでもないです。このところ仲間が増え過ぎ、充分な餌を確保できることが、少なくなってしまったのは事実。早めに、縄張りの餌を確保しに行く方が良いと思います。濡れた羽は、後で乾かせば良いから、今のうちに出掛けませんか』

 雨を待つのも良いし、濡れるのを覚悟で出掛けるのも良い。自分で責任が取れるものは、何れを選ぶのも勝手ですが、餌を自分では探すことができない子ガラスを考えれば、思い切って雨の中を舞うことも必要でしょう。
『諸君、さあいこうか』

 
秋雨に 打たれて伸びる 青菜かな
by tabigarasu-iso | 2006-10-01 22:51 | 随筆 | Comments(0)