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白髪の旅ガラス

夜行列車

 先を急ぐ朝の通勤列車にレールを譲り、夜行列車は青い塗料で厚化粧した車体を、ゆっくり運ぶ。かまぼこ型の屋根を見上げれば、錆びた素肌を隠そうともせず、そのまま走り続けた歳月を見せている。

 新幹線が移動時間を短縮し、飛行機が更にそれを加速する時代になり、老車輌の出番は残すところ僅かであろう。やがて、車体に花を飾った引退のセレモニーが放映されて瞬時に消え、鉄道マニアのカメラの中だけに雄姿が生き延びる日も近い。

 目の前を通過する北斗星を眺めていると、思わず己の人生を重ねたくなる。黒髪は白髪となり、額の皺は深みを増し、背は丸くなり、重い鞄を提げ続けた肩は落ち、腰に痛みを覚えて肩を替え、一息ついたトイレで鏡を見れば、親父に良く似た自分が居る、驚いたあの瞬間を想い出す。

 最後尾の車輌を見送り、背筋を伸ばした。すると忽ち、センチメンタルな気分は消え失せ、夜行列車を初めて利用した新婚当時に気分は戻り、気持は青年、見掛けは中年のコンサルに変身する。さあ、期待を寄せて下さるコンサル現場に参ろうか。

記念日を 想い出すのは 今おっと 
by tabigarasu-iso | 2006-05-24 23:24 | 随筆 | Comments(0)