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白髪の旅ガラス

何処へ

 タクシーに乗り込み行く先を告げましたが、いつもの経路には見られない風景が次々と現れました。十数分経たところで不安になりましたが、疑っては運転手さんのプライドを傷付けると思い、観光客に変身します。

「この辺り、自然が残っていますね。あれは、葦ですか。暢気に朝から釣りも。・・・これまで見たことが無い川ですが、何と言いますか」
「エズコ」
 訛りのせいか、良く聞き取れません。
「あの、何処へと言ったのではなく、先程まで見えなかった川の名ですが・・・」
 本心を見抜かれたことに慌てながらも、行く先の左手に突然出現した、昔の面影を残す川、これを記憶に残そうと聞き直しました。
「江戸のエ、大津のツ、それに湖のコ、エズコです」

 湧き水が大量に噴出し、水流も早いので、川のように見えるが、これも立派な湖とのこと。雨で濁らなければ、地下水が噴出す様子が良く判るとも、親切に解説してくれます。
「何処か流れ出すところがあるのでしょうね」
 溢れ出したら大変ですから、行く先の不安を忘れて、心配してあげました。
「大丈夫、お客さん。この先、川につながっていますから」

 安堵して前方を見ますと、見覚えのある建物が左手にあり、いつもなら右手に見えていましたから、どうやら、反対の道を回って来たようです。料金を心配しましたが、いつもより数百円安く、疑いの言葉を掛けなかったことにも、また安堵しました。

満開の 花を妬んで 黄砂舞い 
by tabigarasu-iso | 2006-04-18 23:06 | 随筆 | Comments(0)