2006年 03月 05日
ソックス
何処に座るのか、観葉植物の隙間から、彼の顔を追う。振り向く顔に、思わず手を振った。まさか、待ち合わせた恋人のようには、見えはしないであろう。手を振るのが似合う年齢は、とうに越しているから。
「久し振り。あれから、何年経つかな」
相手の指が、二本から三本折られた。
「今、どんな仕事をしているの」
およそ噂では聞いて知ってはいたが、本人から聞くのが一番である。
「ソックスですね」
相変わらず、言葉使いが丁寧で、心地良い。いつもなら、知らないことでも、知った振りするコンサルだが、気心知れた相手には素直になれる。
「それって、靴下を売るサービスなの?」
口に含んだコーヒを、噴出さないように耐える、相手の笑う顔を見た。
「相変わらずですね。カラスさん」
偶然に出会った昔の仲間は、今流行の内部統制のことですと、丁寧に説明してくれる。
「ありがとう。何処で働こうが、仲間は有り難いな」
素直に、感謝の言葉が、口からこぼれた。
鶯も 下手な調べで 鳴き始め