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白髪の旅ガラス

消えたタナゴ

 木の葉が縦に泳ぐようにも見え、小さな口で餌を食べる姿が上品なタナゴ、二匹が長年仲良く暮らしていましたが、片方の姿が見えません。先日、水槽の上層を掃除した時には、二匹揃い迷惑そうな横顔で見詰めていたしたから、最近の出来事のようです。

最初に疑ったのは、水槽の上部に這い上がり循環する水を飲む愛猫ですが、罪を犯した素振りもなく、段ボール箱で丸くなり眠る姿に罪は見えません。そこで、留守の間に何か起きたのか娘に確認すれば。

「タナゴ、知らないか」

「一匹、水槽の底に沈んだままだったわ」

「寿命だな。それにしても、何処へ消えたものか」

「もしかしたら」

娘がインターネットで調べたところでは、同居しているハゼは肉食のようです。天命を全うしたタナゴが水槽の底に沈んでいれば、それを片付けるのは、自分達の役目と使命感に燃え、三匹のハゼは競い合い何一つ残さずに食べたことでしょう。

タナゴの命を構成していた細胞が、ハゼの身体の一部になったようです。それにしても、長い間、木の葉のような泳ぎを楽しませてくれた仲間でしたから、成仏を祈り日本酒で献杯。

「それにしても残念だな」

「あら、かなり尾を引いているのね」

 消えたタナゴに未練のある父親に、娘は同情しているようです。

 ところが翌朝、消えた筈のタナゴは元気に水槽で泳いでいました。果て、何処に雲隠れしていたのでしょう。藻の中、砂の中、もしかしたら配管の中に潜り込んでいたのかも知れませんが、姿を見せてくれて良かった。


良く生きた 消えたタナゴに 献杯す


by tabigarasu-iso | 2019-06-28 10:00 | 随筆 | Comments(0)