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白髪の旅ガラス

木枯らし1号に冷やされ

 長雨と台風に飽きて漸くの晴れ間に洗濯物を干し、気分良く出掛けたまでは良かったが、急に吹き出した怪しい風は、暖かくなると見込んだ男の身体の芯まで冷やした。


 それが木枯らし1号の仕業と知った時にはもう遅い。薄地のブレザーとシャツのボタンを締めてみたが、至る所から無防備に体温が逃げて行くのが良く分かる。


 なら、急ぎ足で歩けば身体の芯から温まるだろと先を急けば、そうとは知らない連れは遅れて人混みに埋没して見えない。そのまま迷子になってはいけないから、足を止めて連れを待つ。


「コート、貸そうか」

 備えの良い連れは追い着いたが、木枯らし1号など気にしていないようである。余裕を持って心配してくれたが、事情を知らない足取りは、少しも早くなることはなかった。


木枯らしに 向かうコートを 忘れない


by tabigarasu-iso | 2017-10-30 21:30 | 随筆 | Comments(0)