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白髪の旅ガラス

雪が降る

 ホームで待つ人の横顔を、俄かに舞い始めた粉雪が、勢いを増した北風に押し流され後から後から漂着する。申し合わせた訳でもないのに、人は揃って風上に背を向け、粉雪を受けた。定刻が過ぎても、いつもの電車は来ない。遅延を詫びる駅員のアナウンスが流れたが、口を開くと粉雪が飛び込みそうで、人は押し黙ったままだった。

 この冬の雪、いつもより広範囲に亘り、量も桁違いに多い。それも、山村の過疎地で高齢化が進む地域に集中して降り続くから、やっかいな事態が起こる。屋根の雪を降ろす人手は、七十八十の高齢者ばかりだから、雪降ろしもままならない。放っておけば、雪の重みで押し潰される家も出る。これからが積雪の本格的な季節になるから、ますます危険な状況になろう。

 そんな豪雪地帯から、一時的に離れて暮らすよう、役所の勧めがあったが、長年住み慣れた村を、離れる者は居ない。一端離れたら、家が駄目になる前例を知っているから、当然であろう。それに、避難先が親類であっても、やることの無い生活は送りたくないからだとも言い、尤もなことである。

 そこで、自衛隊が雪降ろしに要請される事態になったが、これは応急処置に過ぎない。雪を降ろす若い世代が住める、村の経済振興を図ることが必要であろう。けれど、誰もそのことを口にしない。

 採算が合わない林業が廃れ、山が荒れれば、水も汚れ、空気も汚れる。綺麗な水や空気を供給する森林保全に税を積極的に投入すれば、そこで若い世代が生活することが可能となり、八十過ぎの方が雪降ろしに命を賭ける光景を、もはや目にすることもなかろうに。

豪雪に 故郷偲ぶ 次男坊
by tabigarasu-iso | 2006-01-25 23:02 | ニュース | Comments(0)