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白髪の旅ガラス

底冷え

 昨今の寒さは、身体の芯から冷えて、足の先など凍らせる。それを解凍するには、熱い湯船に首まで浸りじっと待つ。額から汗が噴き出す頃になると、どこが凍っていたのか忘れてしまう。

 

 湯船から上がり、さっさと寝巻に着替え、冷えた缶ビールで喉を潤し、胃袋の目を覚ましたところで、熱燗をゆっくり落し込む。

「あなたも好きな人だね」

「お宅も」


 そんなやりとりを想像しながら、傾ける徳利が三本になる頃には眠くなる。

「起きていますよ」

「眠っています」

 自分でもどちらだか分からなくなったところで布団に入れば夢の中へ。


 そのまま朝だと良いのだが、昼間の出来事が脳内を駆け巡り、なかなか寝ていられない。

「これまでにない審査でした」

「これまでは申し訳ありませんでした」

「次回もお願いします」

「それは約束できません」

「どうしてですか」

「自分には決定権がありませんので」

「指名すれば可能ですか」

「何とも言えません」

「・・・」

「・・・」

 重い雰囲気に目が覚めた。


 手袋の 皺を伸ばして 鞄持つ

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by tabigarasu-iso | 2016-12-08 10:00 | 随筆 | Comments(0)