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白髪の旅ガラス

月下美人

 棘のない波打った昆布に似た茎から飛び出すサボテンの花、それも一晩だけ咲いて翌朝には閉じてしまう、月下美人は美人薄命の諺通りです。

 雨上がり、インターホンの音が大きく響きました。

「今晩は」

 時計を見れば丁度九時、インターホンのカメラに映し出されたのは近所の方です。安心して応対した妻の手には、この世のものとは思えない白い花が溢れていました。

麦酒を飲み、すっかり赤い顔の自分は恐る恐る妻に尋ねてみます。

「どうしたの」

「今咲いたそうで、届けてくださったの」

 夜に咲く花とは、苦労性だと思いながら花の名が浮かびません。

「何と言ったかな」

「あたしと同じ」

 

 ますます分からず黙っていると、親切な妻は教えてくれます。

「月下美人よ」

「なるほど、その名にふさわしい」

「あたしが」

「いや、花が」


 コウモリを 招く香りに 白い花

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by tabigarasu-iso | 2016-09-24 10:00 | 随筆 | Comments(0)