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白髪の旅ガラス

恐い龍

 天井に貼り付いた像を見ながら、柏手を打てばその像が鳴いたように響く鳴き龍に比べ、眼下に頭が大きく身体の小さな龍を発見し、覗いて見ればその表情に怖いこと。

 写真に撮ろうか、そのまま通り過ぎようか、一瞬迷っていると後から声を掛けられ。
「もう二度と会えないわよ」
 そう言われて思い切って撮影したものの、やはり見栄えの良くない龍に変わりはありません。

 いかにも胴体が小さく、それが頭の上に全て納まるアンバランスな配置がその一因のようです。
「何とも思わない」
「ええ、何とも」
「バランス、悪くはないか」
「本物を見たことがないから、分からないわ」

 いかにも龍は想像の産物ですから、バランスが良いも悪いも、人により感じ方は異なるに違いありません。頭より胴が遥かに長く天までも届く龍を想像する自分には、予想外の龍に怖さを覚えたようです。


  田沢湖の 謂れ伝える 恐い龍
恐い龍_d0052263_14511480.jpg

by tabigarasu-iso | 2015-11-09 14:48 | 随筆 | Comments(0)