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白髪の旅ガラス

巨大なリンゴ

 大きいことは良いことだと言われて育った人間は、大きなカボチャやリンゴそれに梨などを見るとすぐに欲しくなるようです。

 ところが、見た目は旨そうでも、中に虫が入って食べられず、果肉が柔らかで歯応えがなく、贔屓目にみても甘くない。そんな代物と分かっても、決して捨てないから困ったものです。

 やがて甘い香りが室内に溢れ、玄関に入った瞬間に鼻孔を突くリンゴの香りは心地良く、手に入れた人を誉めてあげました。
「良い匂いだ。流石、大きなリンゴを買った価値はある」
「そうでしょう。リンゴは大きなものに限るわ」

 香りが目的なら、無理に大きなリンゴを買う必要はありませんが、それを言ったら本人は気分が悪くなりますから、言い方には工夫が必要です。
「今度は、もっと大きなリンゴを買ったら良い」
「そうね。今度は大きな梨にするわ」


 山栗の 小粒の旨さ 猿は知り
巨大なリンゴ_d0052263_97341.jpg

by tabigarasu-iso | 2015-10-10 09:05 | 小説 | Comments(0)