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白髪の旅ガラス

新世界

 最近、近くを見るときに眼鏡を外すことが多くなりました。近眼、老眼それに乱視の三重苦の世界に入ってから、既に十年余りが経ちます。これまで、一枚のレンズが、三つの苦を克服してきてくれたのですが、ここにきて、近場を網膜に映し出せなくなりました。
 
 眼鏡を外すと近場が良く見えるものですから、パソコンを裸眼で叩いていますと、どうにも目元が疲れてなりません。そこで暇つぶしに眼鏡屋さんを覗いてみますと、これまた暇そうな店員さんが居りまして、眼の検査をして貰いました。

「この文字、見えますか」
 見えはしませんが、正解を言わないと気が済まない性分でして、おそらくカタカナの「ナ」でしょうと答えます。
「あの、眼の検査でして、頭の検査は致しませんので」
 そこから素直に、見えないものは見えないと答えてあげました。
「左右の視力の差が大きくなっていますね。近くは右目だけで、遠くは左目だけで見ている状態です」

 何とも奇妙な目玉になったものです。店員から渡された太い黒縁のトンボメガネを掛けると、実に良く世界が見えましたので、眼鏡を新調することにしました。それから一週間後、新しい目玉を手に入れ、これまで見えなかった世界が次々と飛び込んで来ます。同時に、見たくないものも入りますから、感動と落胆の入り混じる、複雑な脳内となりました。

紅葉の 山の深酒 想い出し ビルの一角 炭火に煙る 
by tabigarasu-iso | 2005-11-14 19:21 | 随筆 | Comments(0)