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白髪の旅ガラス

寿司屋探して三軒目

 その地を初めて訪問する人は、安心して立ち寄れる食事処が知りたいものです。
「寿司の旨い土地と聞いていますが、紹介して貰えますか」
 ホテルのフロントで確認すれば、何軒か紹介してくれました。
「お薦めの順番は」

 ホテルマンに薦められた通り、地図を確認しながら歩いて十分、暖簾を潜れば一軒目の店に開いた席はありません。
「予約されていますか」
「いいえ」
「申し訳ありませんが、予約で満席です」
「はあ」

 力無く頷づき、二軒目の寿司屋に向かいます。疲れで足が重くなり始めた頃、その店に到着しました。
「いらっしゃい」
「あの、空いていますか」
「予約されていますか」
「いいえ」
「申し訳ありませんが」
「はあ」

 腹が空くと適切な判断が難しくなります。
「旨い店は諦めて、とにかく食える店に入ろう」
「ええ」
 結局、ホテルに戻り最上階の寿司屋に入れば、団体の宴会が喧しい。
「食事は出来ますか」
 暫くして通されたのは、団体客から隔離された個室です。
「何とか食事に有り付ける」
「ええ」
 三軒目、漸く富山湾で捕れた魚介類の鮨を食べることができました。

 その翌日の夕方、所は変わって金沢は兼六園の傍になりましたが、ホテルで紹介された食事処は何処も予約で満席です。それでも、三軒目にして漸く座れた魚料理屋では、美味しいノドグロの焼き物に舌鼓を打つことができました。

 予約なし 春から夏に 移る日は
寿司屋探して三軒目_d0052263_14433050.jpg

by tabigarasu-iso | 2015-04-29 14:40 | 随筆 | Comments(0)