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白髪の旅ガラス

氷雨Ⅲ

 放って置いても間もなく散ることが定めの紅葉、その止めを刺す氷雨の非情に呆れながら、傘で受けとめても安心させず、直ぐに回してはるか遠くまで飛ばす。

 それでも、ズボンの裾にまとわりつく氷雨は幾らか残っていた折り目を消した。そればかりか、水溜まりを避けて歩いても氷雨は革靴の底から這い上がり、靴下を濡らして指先まで脅かす。

 予測した通り、定刻から数分遅れたバスに乗り込む。人の息で濁った車内はエアコンが良く効いて温かく、氷雨に包まれ冷えた全身をゆっくり溶け込んで行く。

 バス停から駅構内まで駆け込み乗り込んだ電車の後部座席では、静寂を破る話し声が絶えない。そのうちに終わるだろうと思いながら耐えたが、若い男女の会話は黙って降り続ける氷雨より寒かった。

 耐え難き 冷たい会話 氷雨泣き
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by tabigarasu-iso | 2014-11-27 09:00 | 随筆 | Comments(0)