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白髪の旅ガラス

梅干し

 この時期になると梅雨明け時に漬け込んだ梅干しが店先に並ぶ。どれにしようか品定めする間に涎が流れ出る。それを手の甲で拭き、品定めが一巡したところで、故郷の味に近い品を選ぶ。

 ところが、大半の品が昔懐かしい梅干しではないと分かる。味付けに懲り過ぎ、柔らか過ぎ、妙に甘過ぎて酸っぱい。故郷の塩辛い強烈な梅干しが恋しくて、故郷で暮らす姉に梅干しを漬けて貰った。

 そろそろ漬かった頃であろうと、墓参りの帰路に姉の家へ立ち寄る。昔話に花を咲かせて数時間、腰を上げたところで望みが叶う。それも沢山、半年先まで楽しめそうである。

 早速、朝飯に一粒食べた。その瞬間、半世紀前の自分に戻ったようである。当時は食生活が貧しく、決して好きな梅干しではなかった。何でも簡単に何時でも手に入る今では、当時と変わらぬ素朴な味は捨て難い。

 梅干しに 昔を偲ぶ 夏終わり

by tabigarasu-iso | 2014-08-25 08:25 | 随筆 | Comments(0)