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白髪の旅ガラス

酒豪のダイエット

 昼食に取り揃えた皿の種類を見て驚いた。
「野菜ばかりですね。何処か具合でも悪いのですか」
「ええ、ダイエット中でして」
「穀物を食べないで、良く我慢できますね」
「なに、週末には米の水を沢山頂きますから」
「そうですか。で、如何ほど」
「昔は一升ほど」
「酒豪ですね」
「いや、今は控え目に」

 酒量を聞いただけで、こちらが酔いそうである。その前に話題を変えた。
「このカレーライス、なかなかのものですぞ」
「そうですか。一度も口にしたことがありませんから、何とも言えませんが」
「で、ダイエットの効果は現れましたか」
「体重が減ることはありません。が、増えることもなく、週末を迎えます」
「なるほど、それで週末に沢山の米の水を補給し、その勢いで週の中を乗り切る」
「その通りです」

 そんな酒豪と出会ったのは、小田原の酒匂である。話している間にも、何処からか酒の匂いが漂いそうな場所で迎えた午後、居眠りを予測して酒豪の顔を見た。それを承知していたのか、酒豪は笑みを返す。

 酒豪ばかり注目しては失礼だから、その隣の人を見た。下がり始めた瞼を必死に上げようとしている。きつと、炭水化物を腹一杯詰め込んだのであろう。胃袋に血液の大半が動員され、脳内の血液は空に違いない。酒豪のダイエット方法、居眠り対策には良さそうである。

 酒匂川 漂う風に 誰も酔う
by tabigarasu-iso | 2014-06-18 00:00 | 小説 | Comments(0)