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白髪の旅ガラス

ピンポンの汗

 運動の余り好きでない人でも、旅館の遊技場で楽しむのはピンポンではないでしょうか。遊びとは分かっても負けそうになると悔しくて、何度もピンポンを繰り返す内に酔いも醒めたものでした。

 そんな旅館に行く機会は殆どなく、このところピンポンを楽しむ機会もありません。緩み始めた腹を引き締めるには、もってこいの運動と承知していましたが、わざわざスポーツクラブに出掛けるほど運動好きではない。

 ある晩、気紛れに食卓の位置を変えてみました。棚の隅には、娘の車のトランクから取り出したピンポンのラケットと玉が出番を待っています。
「狭いテーブルだけど、ピンポンしてみない」
「今」
「そう、今でしょ」
「少し遅くない」
「静かに打てば、大丈夫でしょう」

 そんな約束をしても熱が入れば、ヤー、ソレ、コノ、ナンノ、ソノ、ヘイ、ホイ、アリャ、コリャ、セイ、マダマダと音量は上がるばかり。
「静かにね」
「そう、静かに」

 そう言いながら、打たれた球はピンポン、ピンポンと遠慮なく鳴り響きます。
「お仕舞いね」
「そう、良い汗が出た所で」

 ピンポンの 腕を上げれば 卓球に
by tabigarasu-iso | 2013-09-22 00:00 | 小説 | Comments(0)