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白髪の旅ガラス

円通院の涼

 仙石線の松島海岸駅を降り、瑞巌寺の手前の円通院に立ち寄る。19歳で亡くなった伊達光宗公の菩提寺であった。賢明な若者であったが、勤務中の城内で倒れたそうである。

 額から滴り落ちる汗はハンカチに吸わせ、苔むした庭に涼を求めた。屈み込み見詰める眼差しは、古の旅人と同じであろう。その後で携帯のカメラに納めるのは、今風である。

 雲行きが怪しくなり、今にも泣き出しそうな空模様になった。それでも、残り少ない命を惜しんで蝉は鳴く。その鳴き音は、岩肌を流れ落ちる水の音に思えた。

 軒先で雨を避け、手入れの行き届いたモミジに青や赤の葉を眺める。縁側に腰を下ろし、心遣いで置かれた冷水を飲めば、忽ち背中の汗は引いて行く。

 円通院 岩肌洗う 蝉の声
円通院の涼_d0052263_10485539.jpg

by tabigarasu-iso | 2012-08-09 09:00 | 随筆 | Comments(0)