2012年 08月 09日
円通院の涼
額から滴り落ちる汗はハンカチに吸わせ、苔むした庭に涼を求めた。屈み込み見詰める眼差しは、古の旅人と同じであろう。その後で携帯のカメラに納めるのは、今風である。
雲行きが怪しくなり、今にも泣き出しそうな空模様になった。それでも、残り少ない命を惜しんで蝉は鳴く。その鳴き音は、岩肌を流れ落ちる水の音に思えた。
軒先で雨を避け、手入れの行き届いたモミジに青や赤の葉を眺める。縁側に腰を下ろし、心遣いで置かれた冷水を飲めば、忽ち背中の汗は引いて行く。
円通院 岩肌洗う 蝉の声