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白髪の旅ガラス

都会の雀

 通勤ラッシュの地下鉄から地上に抜け出し、神社の境内にある長椅子に腰掛けておむすびを頬張った。目の前には、入れ替わり立ち代わり神様に礼儀正しく祈る人が後を絶たない。

 冷たいペットボトルの水を飲もうとして振り返れば、長椅子の下で三匹の雀が私を見上げていた。
『おむすび、少し分けてくださいな』
 そう、小さな目でお願いされたようである。

 残り少なくなったおむすびを一つまみ、一番痩せた雀にあげた。米が海苔に付いている所為か、食べ辛そうに咥えて歩き出す。それは、仲間と分け合うものだろうと見守った。

 予測は外れ、二番目の雀が近寄り私を見上げる。その目は、物怖じない都会の雀の眼であった。また、一つまみのおむすびをあげると、嬉しそうに咥えて歩き出す。

 とうとう、三番目の雀も同じ様に近寄って、目的を果たして歩き去る。嘘のような話だが、いつか雀から感謝される話が出来ることであろう。

 おむすびを 雀にあげる 翁あり
by tabigarasu-iso | 2012-07-28 10:00 | 随筆 | Comments(0)