2012年 07月 28日
都会の雀
冷たいペットボトルの水を飲もうとして振り返れば、長椅子の下で三匹の雀が私を見上げていた。
『おむすび、少し分けてくださいな』
そう、小さな目でお願いされたようである。
残り少なくなったおむすびを一つまみ、一番痩せた雀にあげた。米が海苔に付いている所為か、食べ辛そうに咥えて歩き出す。それは、仲間と分け合うものだろうと見守った。
予測は外れ、二番目の雀が近寄り私を見上げる。その目は、物怖じない都会の雀の眼であった。また、一つまみのおむすびをあげると、嬉しそうに咥えて歩き出す。
とうとう、三番目の雀も同じ様に近寄って、目的を果たして歩き去る。嘘のような話だが、いつか雀から感謝される話が出来ることであろう。
おむすびを 雀にあげる 翁あり