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白髪の旅ガラス

腐葉土の上を歩く

 ヘルメットを安全の為に被り、革靴を履きネクタイを外した白いワイシャツを覆う背広姿で、工場の境界線に沿った人工林の中を歩く。

 内部監査で現場を確認する際、排水が工場から外へ出る枡を確認することになり、先導役に続いて何も疑わないで笑顔で歩いて行けば、常緑樹林の中へと導かれた。

 下枝を避けて中腰になり、蜘蛛の巣を右手で払いながらも、左手でチェックシートを小脇に抱え、厚く積もった腐葉土の上を革靴で歩く。

 ゆっくり足を下ろせば、幾らか増え始めた自重を全く感じさせない。腐葉土の層は、靴の底に掛かる力を吸収し、あたかも裸足で歩いているような気持ちになる。

 何度も場所を間違えて林の中を行き戻ったものの、漸く目的を果たして舗装された構内に戻る途中、可愛らしい蝮の子供が前方に泳ぎ出て思わず足を止めた。

 蛇が去り、胸の高鳴りが収まったところで歩き始めれば、今度は二寸余りのトカゲが現れる。だが、普段から庭先で見慣れている所為か、先の蛇のように驚くことはなかった。

 孫帰り 障子に開いた 穴二つ
by tabigarasu-iso | 2012-05-20 10:15 | 随筆 | Comments(0)