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白髪の旅ガラス

砂漠に雪

 昭和39年の東京は、飲料水が大いに不足したそうな。当時、これを東京砂漠と称した。それから12年、昭和51年の流行歌になった東京砂漠は、人間性が失われて行く都会で懸命に花開く男女の仲を唄う。

 当時24歳の青年は、東京砂漠を嫌って緑豊かな田舎に戻った。それから36年、経済のエンジンに変わりない東京に戻り、砂漠の中で根を張り奇麗な花を咲かせる人と何度も出会い、知らぬ間に還暦を迎える。

 こんな東京砂漠にも、乾きを潤す今年二度目の雪が舞う。上空に居座る大寒波の所為で、山にも里にも雪が降る。

 その雪で、乾いた人の心まで潤してくれるなら、雪よ降れ降れもっと降れと歓迎したい。灰色の空の下、味気ないビルディングの壁を睨みながら、ガラス窓を擦る降雪に望みを託した。

 降り続く 雪の住処を 仰ぎ見る
by tabigarasu-iso | 2012-01-24 07:25 | 随筆 | Comments(0)