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白髪の旅ガラス

独りで祝い酒

 独り居間の回転椅子に座り、持ち帰った一合升に一升瓶の日本酒をなみなみ注いで、それを一滴もこぼさないよう口へ運ぶ。ほど良く冷えた辛口の純米酒、喉元から食道を下り胃袋に納まった。

 昨日に続き、屋外は晴れて明るい。晩酌を始めるには、いつものことなら早過ぎる。だが、祝い酒なら時間帯など気にならない。瞬く間に一合を空にして二合目に入る。嫌味のないアルコールは、全身に隈なく回った。

 祝いの席には、場を盛り上げる歌が要る。周囲には誰も歌う人などいないから、自分で歌って祝うことにした。かねてより準備したカラオケセットをテレビに繋ぎ、徐に電源を入れる。

 カラオケ店で目にする懐かしい画面が飛び出し、選曲してくださいの表示に促され、余り得意ではない曲を入力した。升酒を一口含み、誰に遠慮することもなく堂々と歌えば、練習曲なのに信じられない高得点である。

 その下には、お上手ですねサインをくださいとの誉め言葉。いよいよ気を良くして、三合目の祝い酒を注いだ。

 晴れた空 北風受ける 風車かな
独りで祝い酒_d0052263_1281566.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-12-12 12:08 | 随筆 | Comments(0)