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白髪の旅ガラス

頬を染めて

 応接室に入るなり、頬を赤くした事務局長は悩ましい顔をした。
「困ったことになりました」
「いきなり、どうなさいました」
「私の頬、赤いでしょう」
「確かに、いつもより」
「そう、今朝から血管が詰まったような気がするのです」
「そんなこと、判るものですか」
「勿論、自分の身体ですから。それに、以前、脳ドックを受けたところ、毛細血管の詰まった所がありましたから、間違いありません」
「それはお気の毒に」
「待ってください。そう言われると、益々血管の詰まるのが増えていくようです」
「それでは、こうしている場合ではありません。直ぐ、医者に診て貰いましょう」
「そうですね。ところで、もう一つ困ったことに」
「何でしょうか」
「事務局とコンサルの成果が問われているのです」
「それは聞き捨てなりませんね」
「それで血圧が上がり、血管が詰まったような気がします」
「成果を評価されるのは、職業として当然のことです。ただ、評価基準が気になりますね」
「そこです。コストパフォーマンスのコストばかり追い、パフォーマンスとして何を見るのか不明のままでは、評価される側として堪りません」
「それを支援するのもコンサルの仕事ですから、それが不充分であったとしても、今となっては甘んじて受けましょう」
「事務局と一蓮托生ということで」
「その通りです」
 いつの間にか、事務局長の頬は元の色に戻っていた。血管の詰まりは、無かったようである。

 北風に 髪を乱され 手は脇に
頬を染めて_d0052263_0462651.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-10-27 00:46 | 小説 | Comments(0)