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白髪の旅ガラス

いなか寺

 檀家を数多く持つ大きな寺は、潤沢な資金があるから寺構えも立派で、象徴的な大きな鐘もある。昔は、その鐘を鳴らして時を知らせていたようだ。何しろ貧しい田舎で育ち、寺はあっても鐘の音を聞いたことがないから、そう言うしかない。

 ところで、柿の実が色付く季節になると、『柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺』の俳句を想い浮かべる人が大勢居ることであろう。正岡子規の作品だが、その時の情景がそのまま誰の心にも映るところが素晴らしい。

 しかしながら、柿をスーパーで買い求め、寺などない新興の住宅街にある家の中で食べる人には、寺の鐘と柿を結び付けることは難しい時代になったと言えるだろう。

 それを承知で一句詠めば、『柿落ちて 鐘も鳴らない いなか寺』。現状をそのまま伝える旅ガラスの一句に対し、天上の正岡子規は呆れるか、それとも微笑んでくれることであろうか。

 鳥の柿 残して置けよと 猿に言い
いなか寺_d0052263_10265712.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-10-08 10:25 | 俳句 | Comments(0)