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白髪の旅ガラス

もったいねえ

 難しい言葉より、説得力のある親しい言葉がある。その一つに『もったいない』があるが、これだと親しみを感じないから、『もったいねえ』と言うことにする。

 ところで、何が『もったいねえ』のか。まずは、未だ着ることができるのに、デザインが古いだけで捨てる背広。もっとも、二十年も着れば色も褪せて擦り切れる箇所もあり仕方がないか。また、胴回りが太くなり、着られなくなって捨てるズボン。既に何回も拡張を重ねて修繕が無理だから、腹の脂肪を削減する努力はするが、それまで意図的に腹を引っ込めるには、腹筋の使い方に無理がある。次いで、片方が行方不明になり、まだ穿ける片方を捨てる靴下。捨てた翌日、洗濯物の山からもう片方が現れ、ゴミ袋に投入したことを大いに悔やむ。更には、未だ映るのに、未だ洗濯できるのに、未だ履けるのに、買い換える新商品。機能が追加されるのは魅力だけれど、果たしてどれだけ必要で、どれだけ使いこなしているのやら。

 その昔、今ほど自由に物が手に入らず、着物や靴下それに履物、何人もの兄弟が使い回し、新品など滅多に身に付けたことがない家が大半であった。テレビなど捨てようにもはなから置いてなく、他所の家に頭を下げて見せて貰う有様。買う食料は、地元で手に入らない海の幸くらいで、あとは自給自足。家の外に捨てるゴミなど、鉄屑くらいであった。それも忘れた頃になると見慣れないおじさんが回収にくるから、廃棄物が出ない生活をしていたことなる。

 必要な衣類だけを買い、何回も嫌になるほど使い回し、使えなくなったら、野良着や雑巾に形を変える、今流行の再利用、再生利用など、当たり前の時代があったことを想い出して貰いたい。そうすれば、これから物を買う時や捨てる時、『もったいねえかな』と心で唱え、先祖や子孫からの声に耳を貸す習慣が生まれるであろう。

蜩に 梅雨の仕舞いを 知らされて
by tabigarasu-iso | 2005-08-04 19:13 | 随筆 | Comments(0)