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白髪の旅ガラス

嵐去り笑顔戻る

 猛烈な嵐が去った翌日、晴れの国の空は抜けるような青空が広がり、遥か彼方の山頂には見事な入道雲が舞い上がる。

 朝から強い陽射しを浴びても、やや強めの冷たい風が吹き、背広姿で歩いても苦にはならない。ただ、仕事を終えた傘が場違いになり、居場所を探して右手から左手へと、恥ずかしそうに迷う。

 そんなことは気にしないで、急ぎ足で駅に向かった。滲み出る汗は風に乾いて、駅の改札を通過しホームで立ち止まっても、これまでのように噴出すことはない。

 モクモクと成長する入道雲を飽きずに見ていると、見覚えのある顔が視界に入った。それは、五年前のコンサル会場で見掛けた顔に違いない。

「お久し振りです」
 名前は直ぐに想い出せないが、迷わないで声を掛ける。
「あれから五年が経ちました」
 当時、渋い顔でコンサルを困らせた人は、懐かしそうに笑顔で応えた。

風に乗り 気楽なトンボ 鼻の先
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by tabigarasu-iso | 2011-09-23 13:16 | 小説 | Comments(0)